2025.11.02水族館に行った話

いつものようにSNSを眺めていて、素敵な水族館の写真を見た。悠々と泳ぐ魚、のんびりした空間。

水族館なんてもう何年も行っていないな。

そう思ったら、もうすぐに近隣の県にある水族館とルートを調べて、列車の予約をしていた。出立前夜二十一時のことである。

朝、仕事に行くよりは少し遅くて、休日にしては少し早い時間に起き出し、身支度を済ませた私は最寄り駅に向かう。風は少し冷たいが、昼頃にはジャケットも暑くなるだろう。

すでに到着していた列車に乗り込み、九時過ぎに出発。ここから約三時間は快適な列車の旅だ。

窓の外はすっかり秋めいていて、むしろ冬の匂いすら感じるほどだった。通り過ぎる田舎の風景は半端な都会で育った自分には物珍しいもので満ちている。木に付けられた白い袋は果物を守るものだろうか。ぶどう、りんご、梨……中は何が入っているのだろう。いつの間にかコスモスも咲いている。金木犀の香りを時折感じるくらいで、季節の花を見かける機会がなかったから少し嬉しい。 

今日は旅の供に本を二冊持ってきていた。「夜色表紙の本(乾石智子)」と「イデアの影(森博嗣)」。 衝動的な小旅行に出かける時、多少時間がかかっても移動に列車を使うのは普段取れない読書の時間を持っためかもしれない。電車通勤の時間がなくなった弊害は自分にとって存外大きいのかも。 ついついスマホで遊んでしまいがちな自分にとっては、時々トンネルで電波がなくなるのも都合がいい。

本と外の景色とを楽しみながら、のんびり時間を過ごそう。

窓の外、海が見える。あれは桜島だろうか、火山をこんなに近くで見るのは初めてだ。

街が見えてきた。自然と文明とがこんなに近くで同居していること自体、珍しいことでもないのに妙に面白く感じる。

駅に到着。マップを見てみると徒歩圏内にいろいろあるらしいことは分かる。駅前の広場でなにかイベントをやっているようで賑やかな様子を横目に水族館へ。

途中、フェリー乗り場とその向こうに桜島が見える。景色がいい。そういえば足元の黒い砂利は火山灰だろうか。

歩いているうちにやっぱり汗ばんできてジャケットを脱ぐ。暑い、秋というより初夏な感じ。  珍しく迷わずに水族館についた。

チケットを買って中へ。すぐにエスカレーターで二階に上がる経路を辿ると、大水槽が出迎えてくれる。今日のお目当てのひとつ、ジンベイザメが泳いでいる。

時間が良かったのか、家族連れが数組いるだけで空いていた。気兼ねなくのんびり椅子に座ってぼうっと水槽を眺める。時々写真を撮って、またぼうっとする。贅沢だ。

今まで行ったことのある水族館は大きいところばかりで、こんな風にのんびり座って眺めるなんてできなかったから本当に贅沢だ。

のんびりしていると気付くことも多い。エイ?の下面側に突起があるもの、ないもの、個体によって違うのかな。群れで泳いでる魚の中にはペースについていけずに置いていかれそうになる子もいる。微動だにせず床に寝そべっている何かがいる。大水槽、楽しすぎる。

楽しい気分のまま一旦先に進むと、大水槽の一部がアーチ状の水槽になっていて魚の下を通る通路になっていた。また立ち止まってしまう。ジンベイザメ、下から見ると存外可愛い。

のんびり歩いて、掲示物を読んで、時々ベンチに座って人越しに水槽を眺める。水族館って一人で来ても楽しい。

今回行った水族館はサンゴ礁に関する説明が充実していたように感じた。土地柄なのだろうか。そういえば、くらげのコーナーもあった。くらげ、どうして洗濯機みたいにぐるぐる一方向に回るのだろう。

一通り見て回って大体一時間半くらい。終わりかな、と思ったらアザラシとイルカのコーナーがまだ先にあるらしいのでそちらへ。

アザラシ、可愛い……………ずんぐりむっくりしている。これの皮をむいたら人になるのか……(ケルト神話でありがちな展開)

そして、イルカ。屋内にイルカショー観覧席が備えられていた。時間を見たら一時間弱くらいでショーが始まるらしい。一瞬待つか迷ったが、地下にイルカの水槽コーナーがあるらしいのでそこを眺めて待つことにする。

地下の水槽は全然人がいなくて逆に不安になるくらいだった。お陰で備え付けのソファベンチにゆったり座ってイルカを眺めていられた。イルカは泳ぐ姿が好きだ。速度もびっくりするくらい出るし、(水槽の中のイルカに向けて言うことではないかもしれないが)自由に好きに泳いでいる姿は気持ちが良い。

大水槽の前でぼんやりしている時間も良かったけど、イルカの地下水槽前は人が全然いない分、眠くなるくらいリラックスして見ていられた。贅沢すぎる。

時間になったのでイルカショーへ。イルカ、賢すぎる。時々床に乗り上げて来てくれるのだが、これが毎回可愛い。来る子ごとに個性があって良かった。乗り上げた瞬間からポーズを完璧に取ってドヤ顔する子もいれば、一瞬ポーズを取ってへちょる子もいて。かわいい、とてもかわいい。一人だからって気弱にならずに観に来て良かった。

なんだかんだで一日楽しんでしまった。歩いて駅まで行くことを思えば帰りの列車まで丁度いい時間だ。今度来る時は近くの名所も巡れる日程で来よう。

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